カーネーションは、感謝を見える形にした花です
5月になると、花屋の店先に赤やピンクのカーネーションが並びます。母の日の花としてあまりに定着しているので、理由を考えずに選んでいる人も多いかもしれません。
でも、この習慣の始まりをたどると、最初から赤いカーネーションだったわけではありません。出発点には、ひとりの女性が母をしのんで白いカーネーションを配った出来事があります。
このコラムでは、母の日に花を贈るようになった背景と、なぜカーネーションが象徴になったのかを、植物の特徴や花色の意味と一緒に見ていきます。
現在の母の日の原型は、20世紀初めのアメリカで広まりました。きっかけとしてよく知られているのが、アンナ・ジャービスという女性が、亡き母をしのぶ集まりで白いカーネーションを配ったことです。
白いカーネーションは、アンナの母が好きだった花とされます。そのため、母の日の花はもともと「母への感謝」と同時に、「母を忘れない」という追悼の意味も持っていました。
カーネーションはナデシコ属の園芸植物で、学名は Dianthus caryophyllus です。花もちがよく、切り花にしても美しさが続きやすいため、贈り物に向いています。
花びらの縁が細かく波打ち、1輪でも華やかに見えることも大きな魅力です。母の日の贈り物としては、扱いやすく、飾りやすく、気持ちを伝えやすい花だったと言えます。
植物として見ると、カーネーションは花びらの枚数や形が人の手で豊かに変化してきた園芸植物でもあります。野の花をそのまま贈るというより、感謝を飾るために育てられてきた花、という見方もできます。
母の日といえば赤いカーネーションを思い浮かべる人が多いですが、色によって受け取られ方は少し変わります。赤は母への愛や感謝を表す色として広まり、ピンクはやさしさや温かい気持ちを伝える色として選ばれます。
一方で、白いカーネーションは母の日の始まりに関わる大切な色です。ただ、日本では弔いや追悼の印象を持たれることもあるため、贈り物としては赤やピンク、明るい複色の品種が選ばれやすくなっています。
日本でも母の日は、学校や教会、百貨店、花屋などを通じて少しずつ広まりました。現在では5月第2日曜日に、カーネーションや季節の花を贈る行事として定着しています。
カーネーションだけでなく、バラやアジサイ、鉢植えの花を選ぶ人も増えています。とくにアジサイは、初夏に向かう季節感があり、長く楽しめる贈り物として人気があります。
つまり、母の日の花は「カーネーションでなければならない」という決まりではありません。大切なのは、花をきっかけにして感謝を言葉にしやすくすることです。
母の日に花を贈る理由をひとことで言えば、感謝を形にしやすいからです。直接「ありがとう」と言うのが少し照れくさいときでも、花があると気持ちを差し出しやすくなります。
カーネーションは、その象徴として長く使われてきました。由来を知ると、赤い花も白い花も、ただの飾りではなく「母を思う日」のしるしに見えてきます。