「植物っぽい」と「植物」の境界線を生物分類から整理する
きのこ狩りや海藻拾いをしていて、「これも植物だよね?」と考えたことはないだろうか。見た目は地面から生えていたり、緑色をしていたりして、いかにも植物らしい。だが生物学の分類では、キノコも昆布も植物界には含まれない。
実は生き物は「界(かい)」という大きなグループに分けられており、植物とみなされるかどうかはこの界の定義で決まる。光合成をする・細胞壁を持つといった条件をすべて満たす仲間だけが「植物界」に属する。
このコラムでは、界という分類の考え方と植物界の条件を整理したうえで、キノコや海藻がなぜ植物界に入らないのかを解説する。最後に植物界の中身である4大グループにも触れる。
生物の分類は「界・門・綱・目・科・属・種」という階層で細かくなっていく。「科」や「属」は植物図鑑でもおなじみだが、「界」はそのさらに上、最も大きなグループ分けにあたる。
植物界に属する生き物には、共通する特徴がいくつかある。すべて満たして初めて「植物」と呼べる。
太陽の光と二酸化炭素・水から自分でデンプンを合成する「独立栄養」の生き物。他の生き物を食べたり分解したりして栄養を得ることはない。
細胞の周りをセルロースという丈夫な繊維で囲んでいる。同じ「細胞壁を持つ」仲間でも、キノコの細胞壁はキチン質という別の成分でできている。
根を張るか岩や地面に固着し、動物のように自分の意思で動き回ることはない。多くの単細胞藻類はこの条件を満たさないため植物界に含まれない。
コケ植物以降のグループは、乾燥を防ぐクチクラ層や、ガス交換を行う気孔など、陸上生活に必要な仕組みを備えている。
日常会話では「植物」と呼ばれがちでも、生物学的には植物界に含まれない仲間は意外と多い。条件のどこかが欠けているのが理由だ。
条件を満たした植物界の中は、さらに「コケ植物」「シダ植物」「裸子植物」「被子植物」という4つの大きなグループに分かれる。身近な庭木や街路樹の多くは、このうち裸子植物か被子植物のどちらかに属する。
コケ植物・シダ植物を含めた4グループの詳しい進化の流れは、下記の関連コラム「植物を系統樹で覚えやすく」で解説している。